近年患者が増加している疥癬(かいせん)は放っておくと危険です
アトピー体質ではないはずなのに乾燥・ひび割れ・強いかゆみが・・・
もともとアトピー体質だとは思っていなかったのに、膝の裏や関節、手足などに異常な乾燥症状がでることがあります。強いかゆみを生じ、場合によってはひび割れになったりすることもあり、アトピーと似た症状です。
License:Sven Teschke
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もちろんアトピーの可能性もありますが、家系的にアレルギー体質もなく、花粉症などのアレルギー性鼻炎の家族もいないとなると、アトピーではなく違う皮膚病の可能性があります。
これは疥癬(かいせん)とよばれる皮膚病で、近年患者が増加傾向にある症状です。
その見た目やとても強いかゆみから、アトピーと間違えやすいですが、原因も治療法も異なるため正しい処置が必要です。
疥癬(かいせん)の原因となる“ダニ”
疥癬(かいせん)の原因になるのはヒゼンダニとよばれるダニの一種です。
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交尾を済ませたヒゼンダニの雌成虫は、皮膚の角質層の内部にトンネルを掘って人体に寄生します。そして皮膚内で成長した幼虫や若虫が糞をしたり脱皮をして抜け殻をのこすと、アレルギー反応として赤くなったり強いかゆみを生じるのです。
虫刺されのような赤いふくらみのような症状を丘疹(きゅうしん)といい、へそを中心とした腹部、胸部、わきの下、太ももの内側、腕の内側などによく発症します。
さらに深いしこりのような症状を結節(けっせつ)といい、外陰部やわきの下、肘、臀部などによくみられます。
とても強いかゆみが特徴で、ダニが死滅したあとも、残った糞や抜け殻によるアレルギー反応に悩まされます。
免疫力の弱いお年寄りはさらに注意喚起が必要
疥癬は他の人に感染するおそれがあります。
疥癬の症状の多くの場合、通常疥癬とよばれる症状で感染力も比較的弱いですが、免疫力が低下しているお年寄りの場合、角化型疥癬とよばれる重度の症状を発症することがあります。
角化型疥癬は感染力も強く、通常疥癬にはみられない頭部や耳への発症がおこります。角質増殖により体中がボロボロになったり、黄白色の“垢”のようなものが付着したり、痛々しい症状になります。(お年寄りに限らず、他の疾患治療でステロイド剤や免疫抑制剤を投与しているなど、身体の免疫機能をわざと低下させる治療を行っている場合も、疥癬に感染する危険性が高まるといえます。)
とくに近年患者数が増大している理由のひとつに、老人介護施設などでの集団感染の可能性が挙げられており、身近な皮膚病になりつつあります。